運命の人 The Man of Destiny

元毎日新聞記者、西山太吉氏が暴露した昭和47年、沖縄返還密約。

いわゆる外務省機密漏えい事件。

この場合1972年というより昭和47年と表記がこの2年前に生まれた自分にさえ、どこか意味合いが違ってくるように見える。

当時、毎日新聞記者で外務省担当、政治報道の最前線にいた西山太吉氏が公務員法違反で逮捕起訴され有罪判決を下された同事件に興味を持ったのは、言うまでも無く昨年12月6日に可決された特定秘密保護法案の審議過程からだ。

当時その秘密保護法 – 知る権利への侵害の危機感から頻繁に氏のインタビュー、記者会見、国会での参考人質問などがネットを中心に動画で上がるようになった。

意外なことにそれ以前の氏へのインタビューやドキュメンタリー映像は殆ど無い。

そして今回同事件を元に書かれた山崎豊子著 ‘運命の人’を図書館から借り読んでみることにした。

特定秘密保護法が持ち上がって、世間の関心から図書館で予約などで埋まって中々借りれないかもしれないと思っていたけど、ハードカバーで全4巻全て揃っていた。

そして読むのに時間が掛かってしまったけど、今は4巻目。

弓成元記者(西山氏)が有罪判決が下ってから失職、家庭崩壊、生家の家業も廃業、死をも考え当て所も無く沖縄へ流れ着く。そこで島の風土やかつて自分が直面した沖縄、その戦時中の記録を辿る作業に入って行くのだ。

今はそんなところまでなのだけど、そこにかなり長いページに渡り書かれている沖縄の当時女学生の体験記には、戦争体験の無い自分にも壮絶な絶望的な女学生の視点が伝わってくる。

たぶん自身の戦時体験もあるだろう山崎豊子氏に女学生が乗り移ったような文章だった。

読書と疑似体験というのは最終的には隔絶しているものだと思うけど、その書かれた沖縄戦の女学生の体験が何か以前よりも近いところで想像できるということだ。

それはやはり被災での直接的な体験は少なかったにしても3.11の経験も大きく起因していると思うし、いつ誰にでも人権が否定されるような現在の世界に自分たちがいるということを、いろんな世界情勢をみても自覚せざる得ないのだ。

悲観というよりも、では何が出来るのかと考えられる余力がまだ、ここでは残されている。

それもどんどん切り崩されてはいるけど。

そして沖縄という自分の住む首都東京から遠く離れた島で起きていることが、人事ではなく自分もまた同じ状況下にいる当事者でもあることにも最近気づくようになった。

沖縄の人より本土、特に大都市圏に住む人にも唯一最大の不幸なことは、そこに気づくことも無く教育すらほとんど無い(少なくとも自分には無かった)ということで、そして自分たちは自由を保障されている国にいると思い込んでいることだ。

まだ同著作を読書中で感想とまでは至らないけど、この昭和40年代後半に一新聞記者が社会に広く投げかけた ‘国家の秘密とは’、‘知る権利とは’、‘表現の自由’とは結局は世俗的なことに置き換わり世間から忘れられ、日本はバブル期の狂騒時代に。。

そして今またそのつけを支払われるべくだけど、昨年の12月6日23時過ぎに可決された特定秘密保護法は執行までに1年、何か世間ではもう終わったことのようになっている。

先ほど(3月26日)もほとんど見るに値しないけどNHK,ニュースウォッチ9ではトルコ、エルドワン政権がSNSを閉鎖したことで‘知る権利を守れ’みたいな大きなテロップが出てたけど、当の特定秘密保護法の国会審議期間中ではまともな報道はしていない。

今回書きたかったことは、この小説に垣間見た沖縄戦の凄まじさを改めて知るきっかけになったこと。そして人の歴史にそんなことが二度と起こらないなんて何にも保障されていないと、実感として日に日に感じるようになっているということだ。

そしてそのあたりを美辞、美談、ゆるくとか、萌えだとか、と包みこむ術も世間の風潮も巧みに成ってきているのだろう。

そして昨今起きている、ここ数十年起表立ってっこなっかた奇妙なこと(ヘイト・スピーチ、裸足のゲン撤去運動、アンネの日記は損事件、浦和レッズのレイシズム大弾幕)が全て繫がっているようにしか見えないのである。

そんなわけでもう3月の終盤、桜も咲き始めた。

残念ながら今週末の天候はよくないようだ。

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